精神科の薬剤師は、多職種連携によるチーム医療の一翼を担っています
精神疾患の治療において薬物療法は、精神療法、行動療法と共に中心的な役割を果たしています。
特に双極性感情障害や統合失調症などの患者様には、抗精神病薬、気分安定薬、抗うつ薬、抗不安薬などの向精神薬が使用され、長期間の継続した服薬が必要であるため、精神科の薬剤師は、その特殊性を熟知したスペシャリストとして、安全な薬物療法を提供するという重要な役割を担っています。
一方で、超高齢社会を迎え合併症を抱えた精神疾患患者様も増えており、疾患横断的なジェネラリストとしての薬剤師にも期待が集まっています。
仕事内容
多角的な薬物医療アプローチ
- 薬に対する反応性や副作用の発現に個人差がある精神医療の現場で適正な薬物療法を進めていくためには、患者様や多職種とのコミュニケーションを通して、専門職ならではの観点で提案を行っていくことや、服薬指導によって患者様やご家族の理解を得ながら支援を継続していくことが大切です。
- 当院の薬剤師は、患者様への個別指導のほかにも多職種によるプログラムに参加しており、チーム医療によって患者様の治療を多角的に進めています。
調剤業務
- 調剤に関しては、基本的に全自動分包機による一包化調剤を行っています。調剤を担当する者と、鑑査する者の2名〜3名体制による確認作業を徹底しています。
- 電子カルテを活用して患者様の背景や臨床検査値などを確認し、処方内容を評価した上で、最適な薬物治療を提供できるよう努めており、場合によっては処方医へ疑義照会を通じてフィードバックするとともに処方提案を行っております。
服薬指導
- 当院では、患者様が主体的に薬物治療に参加していただけるように、薬剤師が病棟やデイケアで、患者様に向けてお薬について説明しています。精神科では、お薬についての疑問や服薬に対する不安をお持ちの患者様がとりわけ多いため、入院から退院まで、さらに地域生活の中で継続した服薬ができるようサポートに努めています。
- 患者様からのご要望が多いのは、不眠症状と睡眠薬についてのご相談ですが、近年ではネットが普及し、情報過多の傾向があるため、お薬に関しての正しい情報、患者様にとってより重要な情報を取捨選択し提供することも、薬剤師の大切な仕事です。このほか、便秘など、精神科で処方されるお薬の副作用についてテーマを定めた内容を、服薬心理プログラムの中で扱っています。
- 当院では地域社会に精神科医療を提供すべく、近隣のご施設や外来患者様・ご家族等に病院広報誌メンタルニュース「桂」を定期発行しており、その中で当院薬剤師が『お薬の話』というコラムを連載しています。
研修
院内教育委員会で月に2回から3回、全職員に向けての研修があります。
ほかにも、精神科病院協会の研修委員会主催の研修会が年に3回程度あるほか、任意で薬剤師会主催の勉強会にも参加できます(院外の場合、出張扱いで交通費・参加費を支給します)。
さらに、医局との合同で、製薬会社の方を招いての説明会に参加することもあります。
- 東京精神科病院協会薬剤師部門研修会
- 精神科領域を中心とした薬剤師研修会
- 東京都病院薬剤師会主催の各種研修会
- 専門領域(精神/栄養/妊婦授乳婦/褥瘡等)
- 臨床薬学研究会・診療所例会・中小病院会等
- 院内教育委員会(院内:月2~3回)
- 職員対象に各職種共通の病院業務に関する勉強会(精神科医療/医療安全/感染対策/接遇/禁煙等)
- 医薬品安全薬剤情報研修会(医局:月1~2回)
- 医局・薬局合同で製薬企業を招いて勉強会(新薬や精神科治療薬を中心にメーカーより説明)
院外の場合、出張扱いで交通費・参加費を支給します。
主な設備
当院薬局の主な設備には、以下のようなものがあります。
- 電子カルテ(処方オーダリング)
- 調剤支援システム
- 全自動分包機(一包化調剤)
- 散剤分包機(円盤型)
- 在庫支援システム
- 電子カルテ
電子カルテは処方オーダーリングですべてつながっているため、手入力によるミスを防げるという点で、業務が正確かつスムーズです。
職員の声
他職種との協働により
新鮮な質問を受けたりすることも多く、とても勉強になります
管理薬剤師 秋間さん
一般の薬局の場合、当然ながら薬を支点に考え、薬剤師だけの世界というか、専門的な範囲のみの仕事内容になることが多いと思うのですが、病院の薬局は他の職種との関わりも多いという特色があると思います。
特に精神科は、医師と看護師と薬剤師によるチーム医療だけでなく、精神保健福祉士や公認心理師、作業療法士などとも協働するため、切り口の異なる考え方を学んだり、新鮮な質問を受けたりすることも多く、とても勉強になりますね。
現場での仕事の大変さとしては、入退院が激しい時などは、速やかに退院処方を出さなければならなかったり、かかりつけの病院で処方されたお薬を持参して入院された患者様の管理をしなければならなかったりで忙しくなることもありますが、これは救急病院ならではの感覚かもしれません。
その分、薬剤師に夜勤がないというのも、一般科の病院とは異なる、精神科の病院の特徴だと思います。